宗教色がなく、自由な形式で故人を偲ぶという点で、「お別れ会」と「無宗教葬儀」はしばしば混同されがちです。しかし、この二つは、その目的や行われるタイミングにおいて明確な違いがあり、それぞれ異なる役割を持っています。両者の最も大きな違いは、「火葬を基準に、その前に行われるか、後に行われるか」という点です。一般的に「無宗教葬儀」は、ご遺体がある状態で、通夜や告別式といった儀式を行い、その後、火葬場へとお見送りするまでの一連の「葬送儀礼」を指します。たとえ宗教儀礼がなくても、それは法的に定められた手順に則った正式な葬儀なのです。参列者も、主に親族やごく親しい友人が中心となる場合が多く、雰囲気も比較的厳粛なものとなります。一方、「お別れ会」は、多くの場合、すでに火葬を終えた後、つまりご遺骨の状態で、日を改めて行われるセレモニーを指します。近親者のみで密葬を済ませた後に、友人や知人、会社関係者など、より広い範囲の人々を招いて、故人との別れを惜しむ場として設けられます。そのため、会場もホテルやレストラン、イベントスペースなどが選ばれることがあり、立食パーティー形式や、故人の思い出を語り合う会といった、比較的自由で明るい雰囲気で行われることも少なくありません。服装も、喪服ではなく「平服で」と指定されるケースが多く見られます。近年増えているのが、この二つを組み合わせる形です。まず、家族だけで静かに「無宗教葬儀(または密葬)」を執り行い、ご遺体とのお別れを済ませます。そして後日、社会的なお別れの場として、大勢の知人を招いた「お別れ会」を開催するのです。これにより、遺族は落ち着いた環境で故人を見送ることができ、かつ、故人と縁のあった多くの人々にもお別れの機会を提供することができます。どちらの形式が適しているかは、誰に、どのような形でお別れを伝えたいかという、遺族の想いによって決まります。